「動物由来感染症」とは、動物からヒトに感染する病気の総称です。
ここでは、イヌやネコからヒトに感染する病気のうち、感染リスクの高い感染症を紹介します。

動物由来感染症

(1)SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、2011年に中国で初めて報告された新興感染症です。
日本では2013年以降、西日本を中心に年間100例以上の報告があります。
主にSFTSに感染したマダニに刺されて感染すると考えられていますが、SFTSに感染したイヌやネコの血液や体液を介して感染したと思われる事例もあります。2025年には、SFTS 感染ネコの治療を行っていた獣医師が死亡した事例がありました。
健康なイヌやネコからSFTSに感染した事例はありませんが、健康状態がよくわからない、野生動物とのむやみな接触は避けましょう。また、マダニに刺されないよう、野山では肌の露出を避けることが重要です。飼い犬や飼い猫には、定期的にマダニ駆除等の駆虫・予防対策を行いましょう。

[参考リンク集:国立健康危機管理研究機構 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

(2)トキソプラズマ症

トキソプラズマ症の感染は、主にネコの糞便に含まれる寄生虫卵の経口摂取により生じます。この寄生虫の卵は、氷点下20℃でも1カ月程度生存可能であること、多くの消毒剤が無効であることなど、環境耐性が強いです。しかし、ネコの糞便中に排出されてすぐは感染しないため、毎日糞便の処理をしていれば感染のリスクは回避できます。また、一度ヒトに感染する寄生虫卵を排出しなくなったネコはそれから排出することはありません。
なお、トキソプラズマ症は、母体から胎子への移行リスクがあるため、注意が必要です。

[参考リンク集:国立健康危機管理研究機構 トキソプラズマ症

(3)レプトスピラ症

レプトスピラ症は、感染動物の尿や尿に汚染された水・土壌から皮膚や口を介して感染する感染症です。原因菌は、淡水や湿った土壌中で数ヶ月も生存可能であり、急性熱疾患として知られるワイル病や秋疫(秋やみ)などが代表的です。
予防として、犬を散歩させるときは水溜まり・用水路などを避けることを心がけてください。もし、散歩中にそのような場所の水を飲む姿を見かけたら、動物病院へ相談することを踏まえて記録をとっておきましょう。

[参考リンク集:国立健康危機管理研究機構 レプトスピラ症

(4)エキノコックス症

エキノコックス症は、北海道を中心にキタキツネの糞を介して伝播する感染症です。しかし、愛知県でも野犬でエキノコックス感染を認める事例がいくつか発生しています。
この感染症を予防するためには、キツネ等の野生動物にはむやみに近づかないこと、飼い犬の場合は放し飼いをしないこと、また、定期的に駆虫薬を投与する方法があります。

[参考リンク集:国立健康危機管理研究機構 エキノコックス症

(5)皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌症は、動物からヒトへの感染が起こることが古くから知られており、感染動物に触れた手などから感染します。犬や猫と比較して、物理的な接触機会が多いウサギやハムスターなどからの発生報告例が多いです。
皮膚糸状菌症は、真菌を原因とする感染症であることから、免疫力を高く維持することで発症を予防することができます。また、感染動物と接触する際は、手袋などをしたうえで、使用後の手袋も表面に直接触れないように処分するなどの注意が必要です。

[参考リンク集:皮膚科領域の真菌性人獣共通感染症.pdf

[参考リンク集]
動物由来感染症ハンドブック2025.pdf
動物由来感染症 |厚生労働省

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